question_answerお問い
合わせ

ソプラノ・サックスの演奏を聴いてみよう

2017年7月12日 管楽器

さて、今回は様々な年代のソプラノ・サックスの演奏を聴いてみましょう。
※私の趣味志向がもちろん入っていますのであしからず。

まずは管楽器の音域表をみてみましょう。

ソプラノサックスの基本音域はオーボエとほぼ同じくらいですね。ソプラノというだけあって、高音域を担当する楽器です。

では順を追って紹介していきます。

Sidney Bechet(シドニー・ベシェ)
1897-1959

最も初期のスター・プレーヤーはなんといってもシドニー・ベシェでしょう。ニューオリンズ・ジャズの分野で1920年代から活動。1939年にブルーノート・レコードが設立された年にレコーディングされた「サマータイム」は彼の代表的な録音となり、ブルーノート・レコード初のヒット作となりました。

余談ですが、サックスにおけるビブラートは年代によって流行や特徴があり、20世紀初頭ではクラシック、ジャズ共に波の間隔が短く、細かいビブラートをかけっぱなしで演奏するのが主流でした。

ベシェの特徴的なビブラートは、フルートでのかけかたに近い、喉を使っての息の強弱によるビブラートかと推測されます。(現在は顎、下唇の圧力の強弱によるビブラートがほとんど。)

Steve Lacy(ステーヴ・レイシー)
1934-2004

「生涯ソプラノ・サックス一筋」、という(著名な)奏者は私の知る限りスティーヴ・レイシーぐらいなんじゃないかと。

以前のコラムでも少し触れましたが、ソプラノ・サックスはマウスピースが小さいので音程のコントロールが難しく、長時間演奏していると唇と楽器の重さがかかる右手の負担が大きいのです。

なので、「ずっとソプラノ・サックスを吹いている」というだけでも超人かなと思います。

上記の動画は「Soprano Sax」というタイトルの1958年発表のアルバム。わりとオーソドックスな演奏ですが、60年代以降はどんどんフリー・ジャズの方向へとシフトしていきます。

John Coltrane(ジョン・コルトレーン)
1926-1967

シドニー・ベシェ、スティーブ・レイシーという名プレイヤーを除けばそれほど用いられていなかったソプラノ・サックスの認知度を一気に引き上げたのが、ジャズ界最大の巨人の一人、ジョン・コルトレーン。

1961年に発表された「マイ・フェイバリット・シングス」のヒットにより、以後ソプラノサックスは晴れて「主要なサックスのうちのひとつ」の地位を獲得します。

「マイ・フェイバリット・シングス」はミュージカルの傑作「サウンド・オブ・ミュージック」の中の一曲ですが、コルトレーンは原曲とは全く異なり、まるでアラビアやインドの呪術的な民族音楽のような、別次元の世界観と演奏に仕立てており、コルトレーンの生涯を通してのレパートリーとなりました。

「シャナイ」というインドの民族楽器の音色や雰囲気を意識していると思われ、それプラス、極めて高度なハーモニー、スケールでの即興演奏力とコルトレーンのソプラノの大きな特徴、トリル(半音や全音で2つの音を高速で繰り返す)の組み合わにより、おどろおどろしさだけでなく、シリアスかつ洗練されたサウンドとなっています。

↓たまたま共演の動画を見つけたのでまとめて紹介します↓

Wayne Shorter(ウェイン・ショーター)
1933-

コルトレーンが脱退した後にジャズの帝王マイルス・デイビス・グループに参加したのがウェイン・ショーター。

60年代の「マイルス黄金クインテット」の一員として活躍。その後、ジョー・ザビヌル率いるフュージョン・グループ「ウェザー・リポート」に参加し、幅広いプレイスタイルを確率。ソロ・プロジェクトではよりスピリチュアルでコンテンポラリーなサウンド(基本的には宇宙と交信している系ですが、はまると半端ない)を構築し、今なお現役で活動するジャズ・ジャイアンツの一人。

ショーターはYAMAHAのソプラノを愛用しており、当時ストレート・タイプしかなかったが、特注でネックを曲げた楽器を彼が愛用していたことから、ネックをストレートとカーブドと取り替えられるデタッチャブルのソプラノが誕生し、世界的に普及したという説あり。都市伝説的な。

David Liebman(デイヴ・リーブマン)
1946-

コルトレーンに多大な影響を受けた代表的な「コルトレーン・チルドレン」のデイヴ・リーブマン。
入手できるコルトレーンのレコードは全て手に入れ、耳コピしたんだとか。

教育者としても熱心で、教育活動の為に世界中を飛び回り、教本の多数出版している。現在日本国内で和訳されている教材「サキソフォーン上達法」は必読。線引きは難しいですが、いわゆる中級者以上が学べることが多い教材となっています。

Kenny G(ケニー・G)
1956-

現在、一般的に最も有名なサックス奏者と言えばケニーGでしょう。メロウかつポップで耳あたりの良いスムース・ジャズの第一人者。
ジャズ奏者というよりは、ポップスのボーカリストに近い感じがあり、グラミー賞も受賞しています。

ジャズ奏者からの批判もありますが(売れてるから)、単に好みの問題なのでここではスルー。ライブの映像をみたらバリバリ吹きまくっていますね。めちゃくちゃ上手い。

循環呼吸で「最も長いロングトーンをするサックス奏者(45分47秒)」のギネス記録も持っているそうです笑

Branford Marsalis(ブランフォード・マルサリス)
1960-

父親と兄弟全員がジャズ・ミュージシャンという音楽一家の長男がブランフォード・マルサリス。伝統的なジャズ・スタイルと圧倒的な音楽力で現役最強のサックス奏者と言っても過言ではないでしょう。

ソプラノ・サックスの音色の美しさは定評があり、スティングの「Englishman In New York」でのソプラノ・サックスはブランフォードの演奏。ジュリアード音楽院でクラシックも学んでおり、クラシック・サックスのアルバムもリリースしています。

本多俊之
1957-

日本人プレーヤーでソプラノ・サックスといえばやはり本多俊之氏でしょう。
ソプラノ・サックスらしからぬ太い音でバリバリ吹きまくります。

奏者としてだけでなく、映画、ドラマ、CMの楽曲も多数手がけています。
伊丹十三監督作品「マルサの女」のテーマ曲が代表作。

須川展也
1961-

クラシック・サックスからも紹介しておきましょう。

国内では今よりもはるかにマイナーなジャンルだったクラシック・サックスの知名度を押し上げたスーパー・スター、須川展也氏が、ジャズ・ベースの神様ロン・カーターと共演したアルバムから一曲。
ジャズやポップスよりも雑味の少ない、よりクリアな音色が特徴です。

accessibility
この記事を書いた人

insert_drive_file
関連するコラム

サックスってどんな種類があるの?

管楽器

さて、今回は大小様々あるサックスの種類を紹介していきたいと思います。 管体の素材は真鍮が主ですが、銅成分を含んだブロンズや銀無垢のスターリングシルバー(非常に高価)など。 表面のメッキは、ラッカー、ブラックラッカー、銀メッキ、金メッキ(高価)、プラチナメッキ(非常に高価)など。 まずは主流となっている4種類のサックスの音域が高い順から。 Soprano Sax ソプラノ・サックス(Bb管) この楽…

2017年6月1日

アルト・サックスの演奏を聴いてみよう

管楽器

前回のソプラノ・サックスに続いて、今回はアルト・サックスの演奏をご紹介したいと思います! ご興味のある方はもちろん、すでにサックスをされている方は、自分のやっている楽器はどんな音色があって、どんな演奏が出来るのか?という事や、好きなスタイルやプレーヤーをみつけて、「この音色が好み!」「こういう風に演奏したい!」というイメージを持つのはとっても大事なことなので、ぜひ参考にして下さいね。 アルト・サッ…

2017年9月13日

お手軽!簡単!ウクレレの種類

ギターその他

ハワイ生まれのウクレレ。 ハワイに移住してきたポルトガル人が作ったのがウクレレのルーツと言われています。 ギターと似ていて様々なコードがありますが、簡単なコードから覚えていけば誰でもすぐに弾けるようになります。 また販売価格もリーズナブルなものからあるので気軽にはじめられるのも魅力のひとつです。 ウクレレには大きく分けて4種類のサイズがあります。 小さい方からソプラノ、コンサート、テナー、バリトン…

2018年10月17日

サックスってどんな楽器?

管楽器

はじめまして!この度RenSミュージックスクールでサックス講師を務めることになりました柴田康平と申します。早速このコラムの打診があり、なにを書こうかな、と考えたのですが、やはり最初は楽器に関する事を紹介していきたいと思います。 サックスってどんな楽器? 「サックス」と聞いてどんなイメージをお持ちでしょうか? ポップスやジャズでバリバリ吹いたり、歌謡曲や演歌でのむせび泣くような演奏、吹奏楽でのアンサ…

2017年5月1日

ベースの魅力!まずは始めてみよう〜ご挨拶編〜

ベース

RenS(レンス)ミュージックスクールのコラムをご覧頂いている皆様、こんにちは。 スーパーノアというバンドでベースを担当している岩橋と申します。 この度、ベースという楽器についてコラムを書かせてもらう事になりました。 バンドにとって、とても重要なパート、ベース。 エレキベース、ウッドベースに問わず、ベースと呼ばれる楽器は色々なジャンルの音楽に使用され、世界中の何万、何十万人とプレイヤーが日々その腕…

2018年2月17日

デヴィッド・ボウイが引き起こす化学反応 〜ボウイとギタリストを巡る考察〜

その他

はじめまして、ツイッターアカウント「デヴィッド・ボウイ名言集」管理人の古川と申します。 今回は音楽教室のコラムということで、ボウイとギタリストの関係について、スポットライトを当ててみたいと思います。 ロック史に輝く名コンビ 早速ですが、皆さんはロック史上に輝くボーカリスト&ギタリストのコンビというと、どんな方々が思い浮かびますか? ミック&キース、プラント&ペイジ、アクセル&スラッシュ、モリッシー…

2018年6月19日

サックス教室(京都河原町)体験レッスンレポート

スクールブログ管楽器

先日、サックス科の体験レッスンを行いましたので、こちらのスクールブログで紹介させていただきます。 ありがたいことに、サックス科のお申し込みを立て続けにいただいています! やはりそれだけ魅力的な楽器ということなのでしょうか。 今回お申し込みいただいたのは、すでにギター科でご入会済みの生徒さんのお姉さん。 サックスをやってみたくて楽器を買ったはいいが、いまいち練習方法がわからない。そんな時に妹さんが当…

2017年7月5日

無料体験レッスン、続々お申込みいただいています!

スクールブログ

こんにちは。RenSミュージックスクールの斉藤です。 この5月にサイトをオープンしまして、ありがたいことに早速無料体験レッスンのお申込みをいただきました! 当スクールの無料体験レッスンの雰囲気を知っていただくために、こちらのスクールブログで紹介をさせていただきたいと思います。 今回、サックスでの無料体験レッスンのお申込みをいただいたのは、楽器に全く触ったことのない、サックス初挑戦の方。 「全くやっ…

2017年5月5日